一般媒介・専任媒介・専属専任媒介は、依頼できる会社数、REINS(レインズ)への登録、活動報告、自己発見取引の扱いが異なります。どれか一つが全員に有利なのではなく、複数社へ依頼したいか、窓口を一本化したいか、自分で買主を見つける可能性があるかを整理して選ぶことが出発点です。
先に押さえたい結論
会社を複数比較しながら販売を進めたいなら一般媒介、連絡窓口を一社にまとめつつ自分で見つけた相手と取引する可能性を残したいなら専任媒介、売却活動を一社へ任せてより頻繁な報告を求めたいなら専属専任媒介が比較対象になります。ただし、物件や売主の事情、契約条項を確認して最終判断します。
媒介契約とは?
媒介契約は、不動産の売却を進めるため、不動産会社へ買主の探索や条件調整、契約手続の補助などを依頼する契約です。売買契約そのものではなく、「どの会社に、どの範囲の販売活動を任せるか」を書面で確認する段階に当たります。
国土交通省の標準媒介契約約款には、一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3種類があり、どの型を選ぶかは依頼者に委ねられています。不動産会社から違いの説明を受け、媒介価額、業務内容、有効期間、報酬額、契約違反時の取扱いなどを確認してから締結します。
売却全体の中で媒介契約を結ぶ時期を確認したい方は、不動産売却の流れを8ステップで整理した記事も参考にしてください。
一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の違いを比較
制度上の主な違いを先に並べます。ここでいう自己発見取引とは、売主が自分で見つけた相手と売買契約を結ぶことです。
契約種別ごとに比較できます
| 比較項目 | 一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 |
|---|---|---|---|
| 複数社への依頼 | できる | できない | できない |
| 自己発見取引 | できる | できる | できない |
| REINS登録 | 法律上の一律義務はない。契約で登録「有」とした場合は登録 | 登録義務あり | 登録義務あり |
| 登録期限 | 登録すると定めた場合も法定の一律期限はない | 契約締結日の翌日から7日以内 | 契約締結日の翌日から5日以内 |
| 定期的な業務報告 | 法律上の固定頻度はない。契約内容を確認 | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
| 有効期間 | 標準約款では3か月以内 | 3か月以内 | 3か月以内 |
| 売主側の管理 | 複数社との連絡や情報整理が必要 | 一社を窓口にしながら自己発見取引を残せる | 一社へ任せ、より短い間隔で報告を受ける |
専任・専属専任のREINS登録期限は、不動産会社の休業日やREINSの休止日を算入しません。一般媒介でも契約書でREINSへ登録すると定めた場合は登録対象になるため、「一般媒介だから登録されない」とは限りません。
一般媒介契約とは?
一般媒介契約は、同じ物件の媒介を複数の不動産会社へ依頼できる契約です。標準約款では、売主が自分で見つけた相手と取引することもできます。
複数社の販売方針や購入希望者への接点を並行して確認できる点は、売主にとってメリットになり得ます。一方、価格や広告内容が会社ごとにばらつかないよう調整し、問い合わせや内覧、申込みの状況を自分でも整理する必要があります。
国土交通省の標準一般媒介契約約款は、重ねて依頼する会社を明示する型を前提としており、新たに別会社へ依頼するときも通知する仕組みです。REINS登録の有無、定期報告の方法、他社へ依頼した場合の通知方法を契約書で確認してください。
専任媒介契約とは?
専任媒介契約は、媒介を依頼できる不動産会社を一社に限定する一方、売主が自分で見つけた相手との取引は可能とする契約です。不動産会社には、REINSへの登録と2週間に1回以上の業務処理状況の報告が求められます。
連絡窓口を一本化でき、担当者と販売方針を共有しやすいことは利点になり得ます。ただし、一社に任せれば自動的に早く売れるわけではありません。査定根拠、広告方法、想定購入者、価格を見直す条件などを契約前に具体化する必要があります。
自分の知人や親族などが購入候補になる可能性がある場合は、自己発見取引を残せることの意味と、その場合の手続・費用の取扱いを契約書で確認します。
専属専任媒介契約とは?
専属専任媒介契約は、媒介を依頼する会社を一社に限定し、標準約款では売主が自分で見つけた相手と直接契約することもできない契約です。REINSへの登録期限は専任媒介より短く、業務報告は1週間に1回以上です。
販売活動を一社へ集約し、短い間隔で進捗を把握したい場合の比較対象になります。一方、友人・親族など自分で見つけた相手と取引する可能性がある売主は、制約を理解しておく必要があります。
報告頻度が高いことと、成約時期や売却価格が保証されることは別です。報告書には、広告を出した事実だけでなく、問い合わせ数、内覧の反応、購入検討者の条件、次の販売提案が含まれるかを確認します。
3種類をどう選ぶ?売主の希望から判断する
契約名から先に決めるのではなく、自分が販売活動へどの程度関わるかを整理すると比較しやすくなります。次の判断シートは、契約方式を決める答えではなく、不動産会社へ確認する順序を示したものです。
売主の希望・状況ごとに確認できます
| 売主の希望・状況 | 確認したい契約上のポイント | 比較の方向 |
|---|---|---|
| 複数社の販売提案を並行して見たい | 依頼先の明示、情報共有、REINS登録、報告方法 | 一般媒介の運用を確認 |
| 連絡窓口を一社にまとめたい | 販売戦略、活動報告、担当者の対応体制 | 専任・専属専任を比較 |
| 自分で買主を見つける可能性がある | 自己発見取引の可否と、その場合の手続・費用 | 一般・専任を比較 |
| 販売状況を短い間隔で把握したい | 法定頻度だけでなく報告項目と連絡方法 | 専属専任を含めて比較 |
| 自分で複数社を管理する時間が限られる | 窓口、内覧調整、広告・申込み情報の集約方法 | 専任・専属専任を比較 |
同じ契約方式でも、担当者の販売経験や提案内容によって運用は変わります。契約方式を選ぶ前に会社・担当者の比較軸を整理したい場合は、売却を任せる不動産会社の7つの確認ポイントを確認してください。
媒介契約を結ぶ前に確認したいこと
- 契約方式:一般・専任・専属専任のどれか。標準媒介契約約款に基づく契約か
- 有効期間と更新:満了日、更新手続、更新後の期間
- REINS:登録義務・登録期限、登録証明書の受領方法
- 報告:頻度、文書やメール等の方法、報告に含める項目
- 販売活動:広告媒体、購入者像、他社への情報提供、内覧対応
- 価格:売り出し価格の根拠と、見直しを検討する条件
- 報酬・費用:約定報酬額、受領時期、特別に依頼する広告等の実費
- 自己発見取引:可否、手続、費用の取扱い
- 解除・違反:解除条件、通知方法、違約金や費用償還に関する条項
契約書で特に見る場所
契約名だけでなく、「標準媒介契約約款に基づく契約か」「特約に何が追加されているか」「解除・費用の条項がどう書かれているか」まで確認します。分からない条項は、その場で署名せず説明を求めて構いません。
契約後に売主が確認したいこと
媒介契約を結んだ後も、販売活動をすべて任せきりにせず、次の情報を定期的に確認します。
- REINS登録証明書を受け取り、物件情報に誤りがないか
- 売主専用画面で、登録内容と「公開中」等の取引状況が適切か
- どの媒体へ広告を掲載し、どの購入者層へ案内したか
- 問い合わせ数、内覧数、見送られた理由にどのような傾向があるか
- 担当者の報告が契約で定めた頻度・方法どおりか
- 価格変更の提案に、閲覧・問い合わせ・周辺競合等の根拠があるか
2025年1月から、REINSへ登録した専任・専属専任の物件では、宅建業者に取引状況の登録が義務付けられました。登録証明書の二次元コードから売主専用画面へアクセスし、「公開中」「書面による申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」といった状況を確認できます。
媒介契約についてよくある疑問
途中で媒介契約を変更できますか?
契約期間の満了時に別の方式を選ぶ、当事者間で途中変更を協議するなどが考えられます。ただし、契約期間中の一方的な変更や解除で費用償還等が問題になる場合があります。現在の契約書と特約を確認し、不動産会社へ書面で相談してください。
一般媒介から専任媒介へ変えられますか?
契約の満了や関係する会社との合意を整理した上で、専任媒介を新たに結ぶ方法があります。一般媒介で他社にも依頼している場合は、各契約の期間や通知条項を先に確認し、依頼先を曖昧にしたまま重複させないようにします。
専任媒介なら早く売れますか?
契約方式だけで成約時期は決まりません。価格、物件の状態、地域の需要、販売戦略、担当者の活動など多くの要素が関係します。報告頻度を活用し、反響と販売提案の根拠を確認することが大切です。
媒介契約を結ぶだけで仲介手数料が発生しますか?
標準約款では、不動産会社の媒介によって売買契約が成立したときに報酬を請求できる仕組みです。一方、売主が特別に依頼した広告等の実費、契約違反や直接取引に関する費用・報酬の規定があります。契約締結時に約定報酬額、受領時期、別途費用の条件を確認してください。 仲介手数料以外も含む全体像は、不動産売却で発生する費用と支払時期で整理しています。
まとめ|制約と報告の違いを自分の希望に照らして選ぶ
一般媒介は複数社へ依頼でき、専任・専属専任は一社へ依頼を集約します。専任は自己発見取引が可能ですが、専属専任では標準約款上できません。REINS登録期限と業務報告の頻度にも違いがあります。
「どれが強いか」で選ぶのではなく、連絡窓口、販売状況の把握方法、自分で買主を見つける可能性、複数社を管理できるかを整理し、契約書の条項と不動産会社の説明を照合して決めてください。
参考情報
- 国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款」(確認日:2026年8月23日)
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(確認日:2026年8月23日)
- 国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」(REINS・売主専用画面、確認日:2026年8月23日)
- 国土交通省「レインズの機能強化について」(2025年1月以降の取引状況登録、確認日:2026年8月23日)
- 東日本不動産流通機構「よくあるご質問」(登録期限・登録証明書、確認日:2026年8月23日)

